後期高齢者医療制度と介護の将来
日本は世界有数の長寿国ですが、多くの国民が長生きできる背景には誰もが高水準の医療が受けらられる仕組みがあるからです。すべての国民が何らかの健康保険に加入していますが、75歳になると自動的に後期高齢者医療制度に加入することになります。
1983年に制定された「老人保険制度」の見直しが行われ、「後期高齢者医療制度」が施行されたのは2008年のことでした。医療保険制度の見直しが必要となった背景には、大きく変化しつつある日本の状況が関係しています。日本は社会保険か国民健康保険のどちらかに加入することが義務づけられている「国民皆保険制度」の国です。国民皆保険制度は、毎月の収入から差し引かれた保険料と公費を財源とし、少しの個人負担で誰もが高水準の医療を受けることができる制度です。
日本ではごく当たり前のことですが、国民皆保険制度がないアメリカでは低所得者の多くが健康保険に加入できず、医療を受けたくても受けられない人がいることが当たり前の状況です。2010年には「オバマケア」と呼ばれた改革制度が実施されたものの、誰もが医療を受けられる状況にはなりませんでした。日本の国民皆保険制度は多くの人にとって助かる制度ですが、国内の状況が変化するにつれ問題点も目立つようになったのです。特に深刻なのが膨れ上がる高齢者の医療費です。高齢者の割合が年々増していることもあり、2013年には年間医療費のおよそ3割が後期高齢者の医療費として支出されました。少子高齢化が進むことによって、保険料の収入と支出のバランスが崩れ、ますます保ちづらい状況となっています。
後期高齢者医療制度は75歳以上の高齢者がそれまで加入していた健康保険から外れて新たに加入する制度です。ただし、特定の難病や障害者など、条件によっては65歳から加入することも可能です。後期高齢者医療制度は自動で加入する仕組みになっており、75歳の誕生日が近づくと「後期高齢者医療被保険者証」が届けられます。世帯主の配偶者が後期高齢者に該当しない場合、その配偶者は国民健康保険の再加入手続きを行わなければなりません。老人保険制度との大きな違いは、75歳以上の後期高齢者が財源の一部を負担することです。老人保険制度の場合は健康保険と公費で50%ずつの負担だったものが、後期高齢者医療制度では健康保険の負担割合を40%とし、残りの10%を後期高齢者の保険料で負担することとなりました。支払い上限額は年間50万円ですが、月々の保険料は都道府県によって異なります。