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後期高齢者医療制度と介護の将来

自己負担の引き上げは後期高齢者医療制度にどのような変化をもたらすのか

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引き上げによってどう変化するのか?

現行の後期高齢者医療制度は、加入者の窓口負担額は原則1割で現役並み所得者が3割です。では、後期高齢者の窓口負担額が介護保険と同じ2割に引き上げられた場合、状況はどのように変化するのでしょうか。

           引き上げによってどう変化するのか?

2割負担のメリット

後期高齢者の医療費は現役世代が支払っている健康保険料から4割を負担する仕組みになっており、現役世代の負担は重くなるばかりです。2019年の医療費43.6兆円で、そのうち後期高齢者の医療費は16兆円でした。このような状況下にあって、後期高齢者の窓口負担額が2割になることは財政の健全化に大きく役立ちます。
2割負担の対象者は決定しておらず、厚生労働省が示した5つの案が検討されている段階です。5つの案は高齢者の年収を5つのパターンに分けたものです。例えば、年収が240万円以上の人を2割負担とするなら75歳以上の13%が2割負担となり、現役世代の負担は470億円軽減されます。一方、最も年収が低い155万円以上の案を採用した場合は75歳以上の37%が2割負担となり、現役世代の負担は1,430億円軽減されます。2割負担の対象が最も広い案を採用した場合でも、3割負担の現役並み所得者と合わせて負担増となるのは高齢者全体の44%です。残りの56%は依然として1割負担のままであり、現役世代の負担が軽減されるとしてもわずか2%ほどです。個人レベルに換算すると、年間3,000円ほどの保険料が軽減されることになります。
高齢者の窓口負担額を増やすことは、医療の過剰供給に歯止めをかける効果をもたらします。負担が軽いため不必要な通院を繰り返してしまう高齢者が減少すれば、限られた費用を適正に活用することができるからです。医師不足が深刻な産科や小児科に医療費を充填できるようになれば、医師不足の解消にもつながるでしょう。

2割負担のデメリット

高齢者の自己負担額が2割になると、少しでも負担を減らそうと受診控えが起こることが予想されています。経営が圧迫される医療機関も出てくるため、なんらかの救済策が必要になるでしょう。また、過度な受診控えは病気のリスクや介護の必要性を高め、高齢者の生活に悪影響を及ぼしかねません。75歳の段階で収入も貯蓄もない人は日々の暮らしを年金に頼るしかなく、医療費の自己負担増が生活苦に直結する可能性があります。年金の支給額は今後も減少するといわれており、年金制度そのものが破綻するリスクすらあります。現時点で75歳以上の人にとって2割負担が厳しいのなら10年後、20年後はさらに厳しくなることでしょう。今後どのようになるのかは予想の域を超えませんが、高齢者の自己負担額を2割にすることですべての問題が解決するわけではない、ということは理解しておいてください。

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