後期高齢者医療制度と介護の将来
現在の日本は高齢者人口は全体の20%以上、と超高齢化社会です。健康リスクが高い高齢者の割合が増えることを受けて医療保険や介護保険は手厚くなっていますが、すべての人が安心して暮らしていくためには現役世代の社会保障制度の健全化も一緒に考えなければなりません。
日本の高齢化は25年以上前からはじまっています。日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳とどちらも80歳を超えていますが、医療や介護分野の発展もあって平均寿命は現在も延び続けています。高齢者がこれほどまでに長生きできるようになったのは、戦後の日本の食生活が大幅に改善され、医療技術が急速に進歩してきたことが大きく関係しています。65歳以上の高齢者が増えれば死亡者数も増加する傾向がありますが、年齢構成の異なる地域間でも死亡状況を比較できる「年齢調整死亡率」によると死亡率は低下傾向にあることが分かりました。
高齢者人口が増え続ける一方で、出生数は減り続けています。1947年の第一次ベビーブームと1971年の第二次ベビーブームの年間出生数はどちらも800万人を超えていましたが、現代では2016年に初めて100万人を割り込んで以来減少し続けています。合計特殊出生率で見ると、第一次ベビーブームの4.32から1956年には2.22まで下がり、その後は緩やかに下がり続けている状態です。
少子高齢化の加速化は社会保障制度にも深刻な影響をもたらします。このことは高齢者1人を何人の現役世代が支えているかを数値化させたものを比較するとよく理解できます。高度経済成長期にあった1960年には高齢者1人に対して現役世代11.2人で支えていましたが、1980年になると現役世代の数は7.4人にまで減り、2014年にはわずか2.4人にまで減少しました。少子高齢化に歯止めがかからない今の状態から予想すれば、高齢者1人を支える現役世代の数がさらに減ることは明確でしょう。このままの状態で2060年まで進んだとすれば、高齢者1人を1人の現役世代が支えることとなります。1人の人が1人を支えることから「肩車社会」とも呼ばれているこの状況は、今ある社会保障制度が現行のままではいつかバランスが崩れることを意味します。
現在、高齢者の医療費は5割が公費で残りのほとんどを現役世代が負担しています。今後の制度改革では少子高齢化がさらに進んだとしても持続可能な社会保障制度とするため、負担額の引き上げや保険給付の範囲、給付の効率化、負担の公平化などを軸に見直しが行われると見込まれています。